アグリッピーナ(小)
アグリッピーナ(小)はゲルマニクスとアグリッピーナ(大)の娘として15年に生まれる。父方はリウィア、アントニウスに繋がり、母方はアウグストゥス、アグリッパに繋がっているという超一流の血筋。また、父のゲルマニクスは将来の皇帝とみなされていた人であった。 19年にゲルマニクスが病没してから一家は不遇になり、セイヤヌスの陰謀で29年から30年にかけて母や兄たちが相次いで流刑、投獄され、その後獄死してしまう。 結婚前には兄カリグラとの近親相姦があったと言われている。28年に結婚し、37年には後の皇帝ネロを生む。 39年に夫が病没。同年、カリグラ帝への反逆罪でポンティア島に流刑になる。 41年にカリグラが殺害され、叔父クラウディウスが即位すると、アグリッピーナは釈放される。 49年にクラウディウスと結婚し皇后となる。50年には息子ネロをクラウディウスの養子にさせ、52年には息子ネロとクラウディウスの娘オクタウィアが結婚する。 そして、54年にクラウディウスを毒殺し、ネロを帝位につけることに成功する。 ネロを傀儡として自らが権力を握るつもりだったのだが、ネロはセネカなどを補佐役として母から自立し言うことを聞かない。母子相姦によってネロを支配しようとしたとの説もある。 59年、ネロの刺客によって殺される。ネロは死んだ母を見て「俺はこんな美しい母親を持っていたとは知らなかった。」と言ったという。 アグリッピーナは稀代の悪女と言われている。確かに悪女の名に恥じない行いではあるが、権力にあまりに近すぎて命の危険におびえる毎日を送ってきた彼女には同情の余地もある。息子の安全のために息子を最高権力者にさせようというのは理解可能である。それで満足できれば平穏な老後を送れたのかもしれないが、最高権力者となった息子ネロを支配し続けようとしたところにアグリッピーナ最後の悲劇の原因があったと言えるかもしれない。 |